そうですね。弁護士に業務懈怠があります。
弁護士の行動規範である弁護士倫理を規定した旧
弁護士倫理 30条でも、
弁護士職務基本規定35条でも、事件の処理として、「弁護士は、事件を受任したときは、速やかに着手し、遅滞なく処理するように努めなければならない」と規定しています。
あなたが依頼した弁護士に対する対処の仕方には、弁護士会(
HOME)に対して苦情相談があります。
そして、紛議調停の申立てと懲戒申立てをします。紛議調停では若干の慰藉料は請求できます。控訴期間を経過したため、権利を失ったことについて、弁護士に対し損害賠償請求できるかは、依頼している訴訟の内容によります。控訴すれば、勝てた状況なら損害賠償請求ができます。これも紛議調停申立てで解決できます。
民事第1審訴訟を受任し敗訴した弁護士の事務員が、控訴審訴訟を受任した弁護士に対し判決送達の日を誤つて伝えたため控訴期間徒過により控訴が却下された場合について、委任者から右第1審訴訟を受任した弁護士に対する慰謝料20万円の請求を認めた事件の判決を載せます。
東京地方裁判所昭和49年12月19日判決(判例時報779号89頁)
ところで、第一審の訴訟委任を受けた弁護士は、控訴審の訴訟委任を受けた他の弁護士からの照会に応じて、敗訴の第一審判決の送達を受けた日を回答する場合、右送
達のときから訴期間が進行を始めることに鑑み、控訴期間満了の日の判断を誤らせ、控訴期間の徒過により適法な控訴の途を失わせるようなことがないように、十分調査
のうえ、送達の効力を生じた日を正しく回答すべき注意義務があり、この義務は、特段の事情のないかぎり、弁護士事務所の女子事務員についても同様であると解するの
が相当である。
本件の場合、前認定の事実によると、被告の前記女子事務員がこの注意義務を怠ったことは明らかであり、そのことと原告が控訴期間徒過により適法な控
訴の途をとざされたこととの間には相当因果関係があるというべきであるから、このために原告に生じた損害につき、被告は右女子事務員の使用者として賠償の義務を免
れないものといわねばならない。
四 〈証拠略〉によると、原告が適法な控訴の途をとざされたために精神的苦痛を受けたことは明らかである。そして、(イ)〈証拠略〉によると、原告が前記判決によ
り明渡しを命じられた店舗の敷地の更地価格は三・三平方メートル当り五〇万円を下らないことが認められ、これによると右家屋の面積二三・九六平方メートルの底地部
分の更地価格は三五〇万円を下らないこと、(ロ)〈証拠略〉によって認められるとおり、前記判決において、原告が支払を命じられている右店舗の賃料相当損害金の額
は一か月三、三〇〇円の割合であること、(ハ)〈証拠略〉によって認められるとおり、原告は昭和四七年一二月二二日丙川弁護士から示談金三〇万円の支払を受けるこ
とによって、同弁護士とは示談解決をしていること、(ニ)その他前認定の諸事情及び本件記録に顕われた諸般の事情を総合すると、原告の前記精神的苦痛に対する慰藉
料の額は五〇万円をもって相当とする。このうち三〇万円については、丙川弁護士から示談金として受領ずみであることは右に認定したとおりである(原告も自認すると
ころである。)から、被告は残額二〇万円についてなおこれを支払うべき義務があるものというべきである。