(1)前年度、場合によっては、過去3年分を総合考慮します。失業手当は一時的なものですので、失業手当だけを基には計算しないでしょう。
(2)婚費の変更は、原則として、申立てたときからですが、その前に、増額ないし減額の請求の意思表示がしてあれば、そのときからです。ただし、過去に遡って婚姻費用を認めた審判
もあります。
判例を掲げておきます。
- 過去に遡って婚姻費用を認めた審判
和歌山家庭裁判所妙寺支部昭和62年3月30日審判
(1)申立人と相手方は,昭和39年1月18日婚姻し,長女光子(昭和40年1月12日生),長男忠幸(昭和42年6月15日生)をそれぞれもうけたが,同5
6年ころから,申立人がとるに足らないことで相手方を責めたり,同人や子供らに対し粗暴な振舞いに及んだりするため,夫婦関係が悪化し,意思の疎通を欠く状態にな
り,その後相手方の家出や申立人の神経科病院への入退院などを経て同59年2月211,申立人が相手方に対し,ささいなことで暴力を振つたのを契機として相手方が
再度家出し,以後完全に別居状態となつた。
(2)その後相手方は,昭和59年2月9田当庁に夫婦関係調整事件(昭和59年(家イ)第8号)を申立てたが,同年5月24日右調停事件が不成立となつたため,
和歌山地方裁判所妙寺支部に離婚等請求事件(昭和59年(タ)第12号)をおこし,同60年1月30日,相手方の請求を認容し,長男忠幸の親権者を相手方
とする判決が下され,これを不服とする申立人の控訴も棄却されたため,右判決は同年6月19日確定し,同日付をもつて申立人と相手方は離婚することとなつた。
なお本件は,同59年10月6日申立てられ,同60年9月1日調停不成立となり,本件審判手続に移行した。
(3)ところで,相手方は,昭和26年4月○○○町役場に就職して以後今日に至るまで右役場に勤務しており現在は産業課専門員の職(管理職)にあり,後記認定のと
おり安定した給与所得があるのに対し,申立人は昭和52年ころから,体調の不調を訴えて不就労であり,したがつて前記別居期間中全く収入を得ていない。
(4)以上の認定事実に照らすと,前記別居が開始された昭和59年2月から,離婚の裁判が確定した昭和60年6月までの間においては,右別居に至つた経過はともか
くとして,相手方は申立人に対し,収入に相応した生活を保障するいわゆる生活保持の義務を負つていたというべきであり,前記離婚の裁判において,財産分与等でこの
点についての判断が示されていない以上,相手方は右期間における申立人の生活費として相当額の婚姻費用を分担する義務があるものといわなければならない(出典:家庭裁判月報39巻10号94頁)。
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調停申立日からの婚姻費用を認めた審判
那覇家庭裁判所平成16年9月21日審判
双方の収入に応じて求められる標準的な婚姻費用分担額を一応の目安として参考にした上,1で認定した事実その他記録上現れた申立人及
び相手方の生活状況,資産その他一切の事情を考慮すると,婚姻費用分担額としては月額35万円とするのが相当であり,その始期としては,調停申立日である平成16
年6月18日とするのが相当であり,平成16年6月の13日間分15万円(月額35万円の日割計算,千円以下四捨五入)と,同年7月及び8月分の合計70万円を合
算した合計85万円を即時に,平成16年9月分以降については,離婚又は別居状態解消まで,毎月35万円を毎月末日限りそれぞれ支払う義務が相手方にはあるから,
主文のとおり審判する(家庭裁判月報57巻12号72頁)。